第50章 試合

楓花はぽかんと目を丸くした。まさかママがそんなことを言うなんて思っていなかったのだろう。瞳の光がすっと落ち、代わりに怯えが滲む。

「ママ……一緒にいてくれないの? でも……でも先生が、パパとママ、いっしょじゃないとって……」

「パパもママも、いるでしょ?」

南坂海乃は、得意げに胸を張る佐藤詩乃を冷ややかに一瞥した。

「佐藤さん、その格好……今日のために『母親役』をやる気で来たんでしょう。だったら、好きにすればいい」

言い捨てると、海乃はくるりと背を向け、グラウンド脇のスタンド席へ歩いていく。いちばん端、いちばん隅の席に腰を下ろし、それきり一度も振り返らなかった。

「海乃!」

黒...

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